【後編】「なんとなく整備」はもう通用しない
ADAS時代の鈑金・整備品質とプロの責任
※このブログは「後編」。
前編では、ADASや自動運転、エーミングの基礎を解説しています。
▶ 前編はこちら
https://avarth.co.jp/2025/12/06/%e3%80%90%e5%89%8d%e7%b7%a8%e3%80%91adas%e3%83%bb%e8%87%aa%e5%8b%95%e9%81%8b%e8%bb%a2%e3%83%bb%e7%89%b9%e5%ae%9a%e6%95%b4%e5%82%99%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f/
前編では、
ADASとは何か、なぜエーミングが必要なのか を中心にお話ししました。
後編は、もう少し踏み込んで
「今まで何となくでやってきた整備・鈑金修理は、
ADAS時代には通用しなくなっている」
という話を、プロ目線+ユーザーさんにも伝わる言葉で書いてみます。
ADASが高度になるほど、「何となく」が許されない世界へ
ADASの機能が増えるほど、クルマは
- カメラ
- レーダー
- 各種センサー
- 高度なコンピューター制御
といった「センサーの塊」になっていきます。

すると当然、
- 少しの位置ズレ
- わずかなボディのひねり
- サスペンション取付部の微妙な狂い
こういった“今まで見逃されてきたもの”が、
安全装備の誤作動や性能低下につながるリスクになります。
「何となく真っ直ぐ走っているからOK」
という感覚では、追いつかない世界に入っている
というのが、現場での実感です。
職人の勘・感覚値「だけ」では足りなくなる理由
鈑金の世界には、
職人の 勘・経験・感覚値 があります。
これは今後も絶対に必要ですし、
AVARTHとしても とても尊重している力です。
ただしADAS車に関して言えば、
「勘・感覚値“だけ”では足りない場面が確実に増えている
というのも事実です。
- フレーム修正の“戻し具合”
- サブフレーム取付位置の微妙なズレ
- サスペンションジオメトリの変化
- カメラ・レーダーブラケットの変形
こういった要素が、エーミングの前提条件そのものを揺るがします。

どれだけ良いエーミング設備でも、「土台」が狂っていれば意味がない
たとえばAVARTHは、
- フラットフロア
- 高精度ターゲット
- BOSCH ADAS機器などの最新機材
- 各メーカー診断機
といった体制を整えていますが、それでも
フレームやボディが歪んだままの車両では、
エーミングの“結果だけ”を合わせても本当の精度は出ません。
- ズレた土台の上に、
いくら綺麗な家を建てても不安定なのと同じで - 歪んだ車体のまま、
カメラ・レーダーの数値“だけ”を合わせても限界があります。
「どんな状態の車体に対してエーミングしているのか」
ここまで含めて設計しないと、ADASの信頼性は担保できません。
正直に言うと、「昔の車はざっくりでも走った」
正直な話をすると、
昔の車は、ある程度“ざっくり”直しても走ってしまいました。
・多少のトーのズレ
・ボディの軽いねじれ
・アライメントの“許容範囲内ギリギリ”
このくらいなら、
「まあこんなものかな」で済んでいた時代もありました。
でも、
今後の車は、もうそうはいかない。
- 車線を読むカメラ
- 前走車との距離を測るレーダー
- それを前提に動く自動ブレーキやステアリング補助
これらの前提条件そのものが少しズレるだけで、挙動が変わる世界になっているからです。
ドライバーの責任から、「システム・整備側の責任」へ
レベル2までは、
最終的な責任は「ドライバー」にあります。
しかし、レベル3(条件付き自動運転)が現実味を帯びてくると、
- 「運転を任せて良い状況かどうか」を判断するのは誰か
- システムの“目”がズレていた場合の責任は誰が負うのか
- 調整不良・エーミング不良は、責任の議論に入ってこないのか
というテーマは、避けて通れなくなります。

現場の肌感覚としては、
「プロ側の責任も、これまで以上に問われる時代になる」
のはほぼ間違いないと感じています。
だからこそ、
- 「エラーが出ていないから大丈夫」
- 「警告灯が点いていないからOK」
- 「試運転して真っ直ぐ走るからOK」
といった、感覚ベースの合格ラインを
どこかでアップデートしていく必要があると考えています。
ユーザーさんにできる“工場選び”のポイント
ここまでかなりプロ寄りな話をしてきましたが、
オーナーさんの立場で言えば、
工場選びのチェックポイントはシンプルです。
- ADASやエーミングについて、きちんと説明してくれるか
- バンパーやガラス交換後に、「エーミングは不要」「多分大丈夫だと思います」と簡単に言っていないか
- 設備やフロアの話を曖昧にせず、具体的に教えてくれるか
「わからないことをごまかさない工場かどうか」
ここは、ひとつの大事な基準になると思います。
自動車業界の大変革期
我々プロの大変革期
CASE、EV、自動運転、サブスク…
言葉だけ追いかけるとキリがない時代ですが、
本質はとてもシンプルで、
「クルマの設計が変われば、
整備・鈑金の“当たり前”も変えなければならない」
ということだと思います。
- 「昔ながらのやり方」に固執するのか
- ADAS・特定整備を前提に、土台からアップデートするのか
- やるべきことをやっていない車両に対して、「NO」と言えるのか
自動車業界が大きく変わる今は、
同時に 「我々プロとしての大変革期」 でもあります。
さいごに

- ADASが先進になればなるほど、
整備・鈑金に求められる「精度」も高い次元で求められる。 - 職人の勘・感覚値は、これからも重要。
ただしそれを、最新鋭の設備・計測・エーミング環境と融合させていくことが、新しいスタンダードになる。 - 「なんとなく」「今まで通り」の基準では、
レベル3や自動運転の世界で、プロとしての責任を果たせない場面が増えてくる。
AVARTHとしては、
この変化から目をそらさず、
同じ現場で戦っている仲間と一緒にアップデートしていきたいと考えています。
そしてクルマのオーナーさんには、
「どんな工場が、最新車両に本気で向き合っているのか」
その判断材料のひとつとして、
今回の前編・後編の記事を役立ててもらえたら嬉しいです。
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ぜひ公式LINEをご活用ください。

12月20日「AVARTH会」のご案内
業界全体で、次の一歩を考える日
この記事で書いてきた内容は、
決してAVARTHだけの話ではなく、業界全体で向き合うべきテーマだと感じています。
そこでAVARTHでは、
12月20日に「AVARTH会(次世代車両対応 展示会&セミナー)」を開催します。
当日は、
- ADAS・エーミング・特定整備に関する実演・解説
- フラットフロアやエーミング環境づくりのポイント
- 最新機材メーカー・商社・メディアの方々との情報共有
- 「現場として、これから何を準備すべきか?」というディスカッション
など、現場目線で“これからの整備・鈑金”を一緒に考える時間にしたいと思っています。
特に、
- 自社でエーミングや特定整備にどう向き合うか悩んでいる整備工場様
- 鈑金塗装工場様
- 販売店・中古車店様
- 保険・アジャスター関係の皆様
には、ぜひ一度生の現場を見ていただきたい内容です。
「うちのやり方、このままでいいのかな?」
「何から手を付けるべきか整理したい」
そんなモヤモヤを持っている方ほど、
ヒントになる一日になると思います。
開催概要やお申し込み方法については、
AVARTH公式サイトのお知らせ欄、または公式LINEからご案内しています。
ご興味のある整備工場様・鈑金工場様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
詳細はこちらのブログから
https://avarth.co.jp/2025/11/30/%e3%80%9012-20%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%80%91%e6%ac%a1%e4%b8%96%e4%bb%a3%e8%bb%8a%e4%b8%a1%e5%af%be%e5%bf%9c%e3%81%ae%e5%ae%9f%e8%a3%851day%e3%82%bb%e3%83%9f%e3%83%8a%e3%83%bc%ef%bc%86/


